大学入試の基礎知識vol.4「新課程入試のポイント」

 2025年度入試から、学習指導要領の新課程に対応した入試となります。大学入学共通テストの教科・科目などで大きな再編が予定されています。

 まず、新課程入試の初年度について改めて確認します。
 2025年度入試からの開始というのは、「2025年度に入学をするための入試」という意味です。よって、2023年度の高校2年生からが受験の主な対象となります。学校でも、自分たちがそういう学年であることはよく言われているかもしれませんね。新課程入試については徐々に情報が発表されるので、今後もこまめに情報を集めていきましょう。

新学習指導要領(新課程)のトピック

 学習指導要領は、文部科学省が各教科において目指すものや指導内容を定めたものです。時代に沿ったものになるよう数年に1度改訂され、教科書の内容も変わります。場合によっては教科の名称が変わることも、新しい教科が追加されることもあります。
 そして、大学入試は、学習指導要領での指導内容を軸として出題されますので、その改訂が入試に与える影響も大きいです。たとえば、数学の出題範囲や、理科の用語など、前の指導要領のもとで学習してきた人との間で教わり方がまったく異なることもあります。

(1)数学
 従来の数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲの枠組みを変更し、数学Cを加えた6冊分の教科書となりました。新課程入試から新しく増えた学習単元は「統計的な推測」です。このほか、数学BからCに移行したものなど、細かな変化があります。
 大学入学共通テストの出題範囲は数学ⅠAとⅡBCの組み合わせです

(2)理科
 「物理基礎・物理」「化学基礎・化学」「生物基礎・生物」「地学基礎・地学」の科目の骨組みは維持されます。用語の名称の変更や、物質の分類方法のアップデート、単元の順番の変更などが見られます。特に「生物基礎・生物」では、太字で扱う語句の数を絞る方針になっていますが、学習内容が減ったわけではないので、負担が軽くなったわけではありません。また、どの科目も観察や実験、科学的な考察を重視するように求めており、大学入学共通テストでも、この方向性を汲んだ出題がなされると見られます

(3)社会(地理歴史・公民)
 地理歴史は「世界史A・B」「日本史A・B」「地理A・B」から「歴史総合」「日本史探求」「世界史探求」「地理総合」「地理探求」に変更されました。新しく設置された「歴史総合」は、従来の日本史・世界史の枠組みを超えて、近現代の世界と日本との結びつきをとらえることを目標としています。必修科目である「歴史総合」は多くの高校において1年次に履修する可能性が高く、これまで3年次に駆け足気味に学習していた近現代史に早くから触れられるのはよいことと言えます。また、「地理総合」も必修科目となっています。
 公民は「現代社会」「倫理」「政治経済」から「公共」「倫理」「政治経済」に変わりました。「公共」は必修科目です。
 高校での履修方法に関しては非常に複雑なのでここで詳しく扱うのは差し控えますが、科目の新設によって文系理系問わず必修科目と学習内容の幅が広がったことは確かです

(4)情報
 高校では長らく授業が行われていた「社会と情報」が「情報Ⅰ」と名称を変え、2025年度入試から共通テストに新しい教科として導入されます(情報Ⅱは選択科目、共通テストでの出題は無い)
 「情報Ⅰ」ではプログラミングの基礎を学びます。現在、小学校ではプログラミング教育の波がやってきています。しかし、現高校2年生はそのような経験無しに受験科目として「情報Ⅰ」と対峙することになります受験対策用の参考書もまだまだ出そろっているわけではありませんし、まずは学校の授業を大切にしていくことが肝心です。

新課程の大学入学共通テスト

 新課程で行われる大学入学共通テストも、section1に代表される科目の枠組みの変化に沿って、共通テストの科目編成にも変化があります。以下に共通テストで出題される科目一覧を掲載します。

〈補足〉一般的に文系は地歴公民から2科目選択、理科は1科目選択します。理系は理科から2科目選択、地歴公民から1科目選択します。

 「改」で示した科目は教科の枠組みや配点に大幅な変更があったもの、「増」で示した科目は試験時間が10分延長されたものです。こうして見てみると、現在公開されている情報だけでも半数の科目に何らかの変更がなされるということです。「改」がついている科目の概要を下で紹介します。

(1)国語
 国語は、「近代以降の文章」2題100点、古文50点、漢文50点の計4題構成から、「近代以降の文章」3題110点、古文45点、漢文45点の計5題構成となり、試験時間が10分延長されて90分になります。いわゆる「現代文」の割合が大きくなります

(2)数学ⅡBC
 section1でも数学については触れましたが、それに加えて試験時間が10分延長され70分になりました。数年前に「数学ⅠA」が10分延長されました。これによって問題のボリュームが増え、苦労している受験生は多いです今後「数学ⅡBC」でも同じようなことが起きるのではないかと予想されます

(3)地歴・公民
 section1では科目の枠組みの変更について触れました。共通テストの科目編成も変更されています。大学によっては科目の組み合わせに制限をつけているところもあるので、関心のある大学の入試科目は要チェックです
 また、「歴史総合・日本史探求」「歴史総合・世界史探求」の2科目については、「歴史総合」が組み合わさることによって従来だと日本史だけ、世界史だけ、でOKだったのが通用しなくなる点で負担増と言えます

 このように、多くの科目で変更が予告されている大学入学共通テストですが、ここに挙げた科目以外も、近年の共通テストでよく見られる「資料の活用」「複数の情報から判断する」の傾向は一層強まるものと思われますこの方針は言い換えるとつまり「たくさん読んで考えましょう」ということなので、読解力はどの科目でも必要となります
 もちろん、いくら文章量が多いと言っても数学なら数学に関する文章ですし、理科なら理科に関する文章ですから、まったく内容が分からないということはなさそうです。ただし、読むのに時間がかかって集中力が切れて…ということはあり得ます。読み込む、考え抜く、という経験値は何年生からでも積んでいきたいものです

新課程の国公立大入試

 国公立大学においては、一次試験として共通テスト、二次試験として大学個別試験が課される二段階方式です。共通テストは学習指導要領の影響を大きく受けますが、大学の個別試験は大学の意向が反映されやすいです。また、私立大学については、公表情報が少ないため、ここでは割愛します。

(1)情報
 情報を二次試験でも出題する予定の大学は、現在公表されている限りだと少ないです。
 (例1)電気通信大学・情報通信学部・前期・・・理科2科目・情報から2科目を選択
 (例2)広島市立大学・情報学部・後期・・・情報必須
 例のような情報系の大学や学部では長い目で見て導入の動きもあるかもしれませんが、2025年度入試においては影響は小幅に収まりそうです

(2)数学
 新課程入試において注目したいのは、①「統計的な推測」が出題されるのか ②文系でも「平面上の曲線と複素数平面」が出題されるのか の2点です。「統計的な推測」は新課程で追加された単元で、「平面上の曲線と複素数平面」は新課程になって文系でも扱うようになった単元です。

①「統計的な推測」の扱い
 新しく追加された範囲ですので、過去問が存在しないのがネックです。出題範囲に加えている大学はそこまで多くはありません。加えている大学も、文系、理系、難関大、医学部などの枠組みによらず、実にまちまちです。なお、愛媛大学では出題範囲に加えている学部はありません。

②文系学部の「平面上の曲線と複素数平面」の扱い
 従来は数学Ⅲに属し、文系とは縁遠かったこの単元、新課程では数学Cに移り、文系の生徒も触れることになりました。しかし、数学ⅠAⅡBCまでの出題範囲の大学で、「複素数平面」を出題単元としている大学はごくごくまれです。この点で、受験生の負担増は最小限に抑えられたと見てよいでしょう。(例)宮城教育大学・教育学部・初等教育(理系)

 以上、新課程入試の二次試験への影響について述べてきましたが、入試科目・出題範囲だけでも大学の考えが反映されます。自分が関心を持った大学がどのような入試科目なのかしっかりとチェックしておきましょう。

 いかがでしたか?
 入試制度は非常に複雑です。そして、新課程入試は「大学によって異なる部分」が非常に多い上に細かいです。志望校決定は入試科目決定を意味しますが、第2、第3志望の大学についても調べておくことが大切です
 寺小屋の高校部では、新課程入試はもちろん、各種学習相談も受け付けております。お気軽にお問い合わせください!

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