大学入試の基礎知識vol.5「学問紹介 データサイエンス」

 2023年度現在で高校2年生である生徒さんが受験する2025年度入試から、大学入学共通テストに新科目として『情報』が加わります(「新課程入試のポイント」)。テクノロジーの発達は目覚ましく、大学受験においても、情報系統の学部の人気は近年高まっており、時代の流れに沿った進路選択がなされていると言えます。一方で、テクノロジーを実社会で活用するための研究も行われています。その研究には多様な分野がありますが、今回は、「データサイエンス」にスポットを当てて、注目の学問領域を紹介していきます。小学校から行われているプログラミング学習、中学校から登場する統計学(数学に含まれる)とも関わる学問分野です。

データサイエンスとは

 私たちが生活する社会は、インターネットを通じてあらゆる人やモノがつながっており、膨大なデータ(ビッグデータ)が蓄積されます。データサイエンスは、ビッグデータを科学的に分析し、社会の課題を解決するような推論を得る学問です。元々は、統計学の一部門だったのですが、近年のテクノロジーの発達に後押しされて、どんどんできることが増えていきました。
 ビッグデータはすでに医療、気象、ビジネスなど様々な分野で応用されています。身近な例を挙げると、スマートフォンなどでチェックできる雨雲レーダーです。過去の気象データを解析した結果、かなり高い精度で雨雲の動きを予測できるようになりました。また、通販サイトでの販売実績から、消費者ニーズを分析することもデータサイエンスの活用例です。さらに、データは数字だけを扱うものではなくなりました。大量の検査画像の蓄積から、医師も発見できない疾病を発見できるようになるなど、画像や文章もデータとして扱われるようになりました。

 データサイエンスにおいては、大きく分けて次の3つの力が必要とされます。
 ①課題を発見し、解決に導く力
 ②必要なデータを収集・管理する力・・・情報学/プログラミング/シミュレーション…
 ③データを分析し、推論を導く力・・・統計学

 膨大な情報・データを扱うため、その処理を効率化するためにはプログラミングなどのコンピューター技術は必須ですそして、それを単なる数字の集合で終わらせずに、課題解決に役立てるまでがデータサイエンスの領域です。多くの大学でも、この3つの力を統合させることを目指しています。実社会に直結するデータサイエンスは、文理多様な分野と関わっています。コンピューターや数字そのものへの関心を追求するなら工学部や理学部といった理系領域になりますが、データサイエンスは、社会との関わりを考えたときに、文系の色が濃くなります。従って、理横断の多様な研究領域の応用がデータサイエンスと言えます

データサイエンスを大学で学ぶ

 section1でもご紹介したように、データサイエンスは文理融合の学問領域です。大学の中で1つの組織(学部)として独立したのは2017年の滋賀大学データサイエンス学部が日本初です。以来、国公立・私立問わず、また規模の大小を問わずデータサイエンスを専門とする学部やコースが次々と発足してきました。新しく学部を設置したり、既存の学部を再編したり、その手法は様々です。大学・学部によって文系理系どちらでも受験できる場合と、理系しか受験できない場合とがあるため、注意が必要です
 愛媛大学においても、社会共創学部産業マネジメント学科では地域経済の課題解決方法の一つとしてデータサイエンスに触れられます。また、2024年度から工学部にデジタル情報人材育成特別プログラムが設置され、実務経験豊富な教員から実践的なスキルを学びます。前者は文系理系どちらの生徒でも、後者は理系の生徒のみが受験できます。
 データと社会のつながりをどのように結ぶかは大学によって異なります。一例を挙げると経済・経営、医療・福祉、地方自治・観光、スポーツなど、各大学様々な分野でデータを応用する教育が行われています。もしも大学選びに迷った際には、この部分も特色としてチェックするとよいでしょう

情報・データサイエンスを学べる大学(中四国の一例)

愛媛大学社会共創学部産業マネジメント学科 

愛媛大学工学部デジタル情報人材育成特別プログラム 

松山大学経営学部経営学科情報コース 

広島大学情報学部情報科学科データ科学プログラム

岡山大学工学部数理データサイエンスコース 

高知工科大学データ&イノベーション学群

香川大学工学部人工知能・通信ネットワークコース 

徳島大学総合科学部社会総合科学科地域デザインコース

データサイエンスでつなぐ現在の学びと未来

 section2でも述べたように、初めてデータサイエンス学部が発足したのは2017年です。そして、わずか15年ほどで時代は大きく変わり、今の小学生が大学受験をする頃にはプログラミング教育は世代共通の経験となっています。つまり、「プログラミングに触れた経験がある」ということは、周囲との差別化にはなりませんそのような時代において大切なのは、技術から価値を生み出せることにあります。企業の利益に貢献する、医療の発展に貢献する、よりよい政策決定に貢献するなど、「それを使って何をしたいか」に答えられる人材を社会は求めています。テクノロジーの進化は留まるところを知らず、その可能性は未知数。データサイエンスは私たちに一つのヒントを与えてくれるでしょう。
 医師や教師、弁護士、栄養士などの資格を持っておくことが将来の進路に直結することは明らかです。一方で、ビジネスや医療、気象など、様々な領域に関わるデータサイエンスは、可能性を広げる点で今後も発展が期待される分野と言えます。そして、その流れに思い切って乗れるかどうかは、教科としての「情報」にいかに親しめるかも大きいです。詳細な知識が無くてもスマートフォンやタブレットは使える人が多いです。その手軽さと構造との間にはギャップがあり、「情報」をきっかけにコンピュータ領域に関心を持つのは難しい人もいるかもしれません。そこで、高校生としては必要な知識を整理すること小中学生は少しでも楽しんでプログラミング、あるいはプログラミング的思考を身につけることがポイントです。現在高校生の方は、寺小屋のコースの一つである河合塾マナビスで『共通テスト対策情報Ⅰ』が2024年2月からリリースされます。また、寺小屋では小中学生向けのプログラミング教室も一部教室で開講しております。興味のある方はぜひお近くの校舎にお問い合わせください。

0
この記事が気に入ったらいいねをお願いします!
a)学習塾分野
TERAKOYAをフォローする
てらこやブログ
トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました