大学受験の基礎知識vol.1「保護者も知っておきたい入試制度」

はじめに

 日ごろ、高校生のお子様をもつ保護者様から次のようなお声をいただきます。

「初めての子どもだから受験のことはよくわからない」
「私たちの時代とはいろいろと変わっている」
「子どもはのんびりしていて心配」

などなど。

 高校生にとって大学受験は、多くの選択肢からひとつの進路を選びとる大きな分かれ道です。お子様の成長のためにも、ある程度はご本人に任せるのがよいのですが、

保護者の方が大学受験のことを知っていて任せるのと、知らずに任せるのとでは、お子様の安心感は大きく異なります。

いざというときに適切にアドバイスができたり、ご家庭で話し合いができることはお子様の決断にプラスに働きます。
 このコーナーでは、複雑な大学受験について、保護者の方にも知っておいていただきたいことをご紹介していきます。

section1 大学受験の基本スケジュールと選抜の種類

大学受験には大きく分けて2つの選抜方式があり、国公立大学・私立大学ともに行われます。

 ① 一般選抜
 ② 総合型選抜(旧AO入試)・学校推薦型選抜

 ※②はまとめていわゆる「推薦入試」として一般的には認知されています。

7月2024年度入学 選抜要項発表定員や出題科目、配点、選抜方法が正式に発表
9月総合型選抜 出願
10月総合型選抜 試験
大学入学共通テスト 出願
11月学校推薦型選抜 出願
総合型選抜 合格発表
12月学校推薦型選抜 合格発表
一般選抜 募集要項発表
出願方法、受験の時間割などが正式に発表
1月私立大一般選抜 出願
13・14日 大学入学共通テスト
国公立大一般選抜 出願
学校推薦型選抜の出願が1月に実施される大学もあります
2月私立大 一般選抜・合格発表
25日 国公立大 前期日程
3月国公立大 前期日程合格発表
8日 国公立大 中期日程
12日 国公立大 後期日程
国公立大 中・後期日程合格発表
大学入試の詳細スケジュールは各大学の募集要項等でご確認ください

ポイントは、一般選抜の定員に占める割合が多いこと(国公立大学は定員の約80%)、学校推薦型選抜・総合選抜が年内に実施され、一般選抜が年明けから始まることです。時期に大きなずれがあります。

section2 センター試験から大学入学共通テストへ

 1990年から始まったセンター試験に代わって、2021年1月から導入されたのが大学入学共通テストです。1月中旬の土日の2日間で行われ、毎年45万人以上が受験する日本最大級の試験です。各大学は、共通テストの得点を合否の判断材料とします。

 特に、国公立大学の一般選抜は、共通テストの得点と大学ごとの試験の総得点で合否が決まることがほとんどです。また、多くの私立大学でも、共通テストの得点を利用する選抜方式を設けています。section3で詳しく述べる学校推薦型・総合型選抜でも、共通テストの得点が合否に関わることがあります。大学受験を考えるにあたって共通テストの受験は必須と言っても過言ではありません。

 出題形式は全問マーク式です。

 受験教科は外国語・数学・国語・理科・社会(地理歴史・公民)で構成され、各教科の中で多数の科目に細分化されます(例:理科…物理・化学・生物・地学など)。どの科目を受験する必要があるかは大学・学部・学科によって異なりますので、情報収集が重要となります。大学ごとのHPから調べることもできますし、学校や塾の先生などに質問するのもよいでしょう。

 なお、2024年度(2025年1月)実施の共通テストより、新学習指導要領に基づいて、教科・科目・試験時間等が変更されます。大きなトピックとして既存の教科に加え、新教科「情報」が導入されます。

2023年度に高校2年生の生徒さんは、今後各大学から順次公表される情報に注意が必要です。

section3 広がる学校推薦型選抜・総合型選抜

 一般選抜と並ぶ大学受験のもう一つの柱が学校推薦型選抜・総合型選抜です。積極的に推し進める高校もあれば、生徒さんの自主的な情報収集に任せる高校もあり、対応は様々です。国公立大学の中でも一般選抜の定員を一部縮小してこれらの選抜の定員を増やす大学もあり、受験における位置づけは大きくなっています。大学によって選抜方法や時期が異なるため、注意が必要です。

学校推薦型選抜

 学校推薦型選抜は学校長の推薦書が必要となり、通知表の5段階評価の平均値(評定平均)に下限が設定されていたり、現役生しか受験できなかったり、出願に条件がついていることが多いです。評定平均は高校1年生からの成績を含めて算出するため、高校1年生のうちから定期考査で得点を確保することが出願への近道です。

公募制大学が課す出願条件をクリアし、在籍する学校長の推薦を受ければ誰でも出願可能。
指定校制大学が指定した高校の生徒しか出願できない。高校での選考で出願者を決定する。私立大学が中心。

 国公立大学での学校推薦型選抜は、募集定員が少ないため狭き門になりがちです。高校での学習状況や課外活動を重視するほか、小論文・プレゼンテーション・口頭試問・共通テストなど学力を確認する評価を実施することがほとんどです。

 私立大学では多様な公募制学校推薦型選抜があり、国公立大学と同様学力を重視する方式のほか、秀でたスポーツの実績を重視する「スポーツ推薦」、英語資格試験や日商簿記などの実績を優遇する「有資格者推薦」が挙げられます。

総合型選抜

 総合型選抜は学校長の推薦は不要で、各大学は、生徒の学習意欲・目的意識を見るために、独自の様々な試験を課します。生徒が提出する書類に加え、小論文、面接、ディベート、講義受講とレポート提出などを複数段階の試験で課すことによって総合的に合否を判断します。

 学校推薦型選抜に比べて、出願時に提出する書類が多いこと、試験が長期にわたることから、受験生には時間をかけた準備が求められます。

 特に総合型選抜において、大学の入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)を理解しているかどうかは大切な要素です。志望大学・学部(学科)に関する強い興味と学習意欲があるか、志望大学(学部)の教育方針を理解して入学を希望しているか、ゼミをはじめ入学後の授業においてリーダーシップを発揮できるかなど、意欲が選考のポイントになります。

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